あらすじ
「国民のために働く内閣」
「コロナの収束と経済の立て直しに全力で取り組む」
内閣発足後、こう強調した第99代首相・菅義偉氏。
同時に、規制改革、地方経済活性化、行政のデジタル化、
不妊治療への保険適用などに向けてアクセルを踏んだ。
スガノミクスは日本経済と日本国民を救えるのか!?
感想
現実の話がたくさん盛り込まれていて非常に面白かった。高橋洋一教授は財務官僚として歴代の政権で大きな仕事をしており、内部事情を知っているので興味深い話がたくさん出てくる。現実は厳しいなと感じるエピソードもあったが、理論の話に終始しないのが、多くの経済学書と異なり魅力的であった。
備忘録
安倍さんは、私が消費増税に反対していたことはよく知っていたし、それが原因でインフレ目標に到達しなかったことも認識していた。
私の印象では、財務省を完全に敵に回すのは難かったんじゃないかなと感じた。経済政策としては、インフレ目標を達成して、賃金が上がれば100点満点だったけれど、そこまではいかなかった。頭の中で考えると100点は取れるんだけれど、実際には、100点に行ってない。
アベノミクスの失業率低下について対談している箇所の、高橋洋一教授の発言である。安倍総理大臣はマクロ経済を適切に理解しており、望ましい政策をわかっているのに実現できなかったということがわかる。これが政治の世界なんだということだろうが、現実は厳しいなと感じる。しかし財務省は本当にどうしようもない存在である。
財務省はホームページに外国格付け会社意見要旨書というものを載せていて、「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」と書いてありますが、正確に読むと、実は、この文章はトートロジー(同義語反復)になっている。
最初に「先進国」という条件を入れているわけ。先進国の定義を書いていないんだけれど、これは、インフレ目標のようなまともな経済運営をするというのが前提条件で、まともな経済運営の範囲内であれば、自国通貨建の国債のデフォルトは考えられない、と言っている。
現在貨幣理論(MMT)を信奉する社会主義者がたびたび出してくる文章である。実はこれを書いたのは高橋洋一教授だったのだ。これは、「国債をいくら発行しても問題がない」という、MMT信奉者の解釈を補強するものではないのだ。この事実を伝えれば彼らの洗脳も解けるに違いない。
結び
高橋洋一教授や田中秀臣教授の話はいつ聴いても面白い。理論経済学の話をただただ聴いているのとは違い、実際の政策の話をしているからである。新型コロナウイルスの混乱の最中、菅政権の経済政策を理解するのは容易ではないが、彼らの発信を参考にしながら、考えていきたいと思う。