日本の二酸化炭素排出量の推定と輸入に内包された二酸化炭素の分析 1

日本の輸入に内包された温室効果ガス排出量(2011年)

イントロダクション

今日、国際社会で最も議論されている問題は温室効果ガス排出による地球温暖化、及びそれに伴う気候変動である。その対策のための取り組みの一環として、2015年12月、地球の平均気温の上昇を産業革命前のレベルから2℃以下に抑えることを目的として、パリ協定が採択された1

従来、温室効果ガス排出量の議論は生産ベースの基準に基づいていた。これは文字通り、生産活動に関わる温室効果ガス排出量を示すもので、温室効果ガス国家インベントリの観点から見ると、一国の領域の中から排出された総量を計算するものなので、領域ベースの基準とも呼ばれる。

インベントリ

一定期間内に特定の物質がどの排出源・吸収源からどの程度排出・吸収されたかを示す一覧表のこと。気候変動・地球温暖化の文脈では、一国が1年間に排出・吸収する温室効果ガスの量をとりまとめたデータのことを、一般的に温室効果ガスインベントリと呼んでいる。

しかし、生産ベースの基準の下で、各国の温室効果ガス排出削減政策は国内の排出を減らすことに集中し、結果として、バーデン・シフティングと呼ばれる問題が発生した2。これは、汚染集約的な産業を海外(ときに発展途上国)に移し、代わりに輸入を増やすことで、生産ベースの基準の下での温室効果ガス排出量を減らしながら、最終製品の消費を維持することをいう3

その後、これらへの問題意識が、正反対の考え方に基づく消費ベースの基準を産むことになる。消費ベースの基準は、消費活動に関わる温室効果ガス排出量を示すもので、温室効果ガス国家インベントリの観点から見ると、輸出に内包された温室効果ガス排出は除外され、輸入に内包された温室効果ガス排出は含まれる3

輸出に内包された温室効果ガス排出

輸出品の生産の過程で排出される温室効果ガスを指す。輸出品は自分たちが消費することはないので、消費ベースの基準の下では、輸出に内包された温室効果ガス排出は温室効果ガス国家インベントリから除外される。

生産ベースの温室効果ガス排出量と消費ベースの温室効果ガス排出量の差は、カーボン・トレード・バランスとして知られている。正のカーボン・トレード・バランスは、輸入に内包された温室効果ガス排出が輸出に内包された温室効果ガス排出を上回る状況であり、ある国の消費構造が外国に汚染逃避地を作っているという仮説を証明する3。すなわち、カーボン・トレード・バランスは、バーデン・シフティングの度合いを示す指標となる。

パリ協定は、京都議定書と同じく生産ベースの基準を採用しているが、消費ベースの基準への政策的な注目はますます増加している。例えば、スウェーデン環境保護局は、消費ベースの温室効果ガス排出量を世代間目標として採用している4

本論文の主な目標は、1995年から2011年の日本の消費ベースの二酸化炭素排出量を推定することである。日本では消費ベースの基準を導入する動きはないので、有意義な政策的インプリケーションを与えることになる。その上で、生産ベースの二酸化炭素排出量を計算し、カーボン・トレード・バランスを分析する。最後に、要因分解分析を行い、輸入に内包された温室効果ガス排出について詳しい分析を与える。

参考文献

本稿は、当ブログの運営者が2021年に提出した修士論文を和訳、一部訂正を加えたものです。詳しい情報をお求めの方は“お問い合せ”よりご連絡ください。