あらすじ
ヴェノナ文書で裏づけられる真珠湾攻撃というシナリオ。衝撃!米保守派の最新歴史研究。戦後の常識が全てひっくりかえる!ロシア革命から100年今明かされるスターリンの戦争犯罪。日米を戦争に追い込んだソ連の謀略。
感想
本書は著者が2016年に上梓した『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』の続編という位置付けであり、前作で触れられた第二次世界大戦期のソ連コミンテルンによる工作活動について詳しく解説したものである。
本書は基本的に、M・スタントン・エバンス とハーバート・ロメルシュタインによる邦題『スターリンの秘密工作員』に依拠している。未訳の本だが、英語の抵抗がない方はこちらも読まれるのが良い。
前半部は、日米開戦のために行われたスターリンによる三つの工作、すなわち、ゾルゲ機関による対日工作、情報機関NKVDによる対米工作「雪」作戦、そしてラフリン・カリーによる対中対米工作について解説されている。
一つ目は、「日本を対ソ警戒の北進論」ではなく、「英米と対立する南進論」に転換するために、二つ目は、日米和解を妨害するために、三つ目は、日米交渉を妨害するために中国を使って行われた工作である。
後半部は、二段階の終戦工作、すなわちアジアに共産化をもたらす戦後国際秩序構想をルーズベルトに飲ませるための工作、及びその実現のためのソ連による対日参戦を実現させるための工作についてである。
それにしても、共産主義国家のインテリジェンスとそれらによる工作活動の恐ろしさを改めて認識した。いうまでもなく、中国共産党も同じことをしているのであり、現代の我々に対しても多くの示唆を与えるものである。
結び
ソ連コミンテルンによる工作を明らかにすることは、日本の責任を回避するためではない。我々がするべき反省とはまさにこのことであり、歴史を繰り返さないないための対策が必要である。