森見登美彦『きつねのはなし』を読んで

あらすじ

「知り合いから妙なケモノをもらってね」籠の中で何かが身じろぎする気配がした。古道具店の主から風呂敷包みを託された青年が訪れた、奇妙な屋敷。彼はそこで魔に魅入られたのか(表題作)。通夜の後、男たちの酒宴が始まった。やがて先代より預かったという“家宝”を持った女が現れて(「水神」)。闇に蟠るもの、おまえの名は? 底知れぬ謎を秘めた古都を舞台に描く、漆黒の作品集。

感想

あの「腐れ大学生シリーズ」の著者だとは思えないほど、雰囲気が変わった作品である。一言で言って本当に怖い。クスッといったような小さなものも含めて、笑いは一切無し。情景の描写だけではなく、ストーリーそのものが非常に畏ろしい。

また、何よりも結果が腑に落ちない。最後まで読んでみて振り返ると、どういうことであったのかが理解できない。ただ、このこと自体は著者の狙い通りのようで、『総特集 森見登美彦 作家は机上で冒険する!』のインタビューの中で、本作品について次のように語っている。

僕の理想がまさにそういう形の怪談なんです。説明できないシステムがそこにあって、そのシステムから「何か」が断片的にこっち側に来るんだけど、その内部の動きは人間の世界では説明ができない、でもそこには確実に何かあることはわかる・・・・・・そういう、向こう側に何かありそうな気配を捏造して、そのまわりをぐるっと文章でたどっていく感覚が好きなんです。

結び

森見登美彦氏を知らない人がこの作品を最初に読んだとしたら、氏の雰囲気を随分と勘違いすることになる。たしかに本作も非常に面白いのだが、森見ラブな私としては、「腐れ大学生シリーズ」を堪能して頂きたいと願ってやまない。