あらすじ
「マルクス経済学」(社会主義)から、フランクフルト学派「批判理論」、フロイト「エディプスコンプレックス」、丸山眞男の日本論「古層」まで、リベラルの欺瞞と危険性を暴く!「知の巨人」による思想論。
感想
左翼が繰り広げる偽善への理解が深まった。本書の少なくない部分が、具体例(例えば憲法9条等)の解説に割かれており、左翼思想が具体的なテーマにどのような影響を及ぼしてきたのかが解説されているのが嬉しい。
備忘録
フランクフルト学派は、リベラルをイデオロギーとするユダヤ系学者グループで、ドイツでナチスが台頭した時期、反ユダヤ主義政策に追われてアメリカに亡命してきました。(中略)実は、フェミニズムやジェンダー・フリー、カルチュラル・スタディーズや多文化主義など今日に至るリベラル勢力の運動はすべて、このフランクフルト学派から出た理論によっているのです。
具体的な話については読んで頂きたいのだが、簡単に言えば、リベラリズムにはユダヤ人迫害の悲劇の歴史が深く関わっているのである。
多文化主義は、「それぞれ異なる文化がほんの少しでも傷つけ合う可能性を排除するため」という名目のもとで「全ての文化は均一化されるべきだ」とする考え方なのです。“文化の破壊”を目的としていることは明らかでしょう。
確かに、一方では多様性を激しく主張しておきながら、もう一方では日本の文化や伝統に誹謗中傷を加えている左翼をTwitterで数え切れないほど見てきた。
自由が日本であまり語られてこなかったのは、日本人には、自由などは自明のものとしてあり、わざわざ語る必要がなかったからです。(中略)前述したように、日本の文化は自然を中心とする「自然道」です。人間は“自然の子”であり、そこに制約などは最初からありません。(中略)ところが、西洋の場合、人間は“神の子”です。もともと持っているものは何かというと、「原罪」です。(中略)西洋の場合は、人間は全て原罪を持ち、あらかじめ制約されている存在です。
西洋と比べたがるのは左翼の常である。しかし、日本にはリベラルという概念が通用する素地がそもそも無いのだ。
結び
この本ではリベラルという単語が、世間と同じ使われ方をしているが、本当はこれは誤解である。リベラリズムは自由主義であるのだから、選択の自由を抑圧することで成立する一般的な左翼思想(社会主義)の真逆をいくイデオロギーである。詳しくは、『資本主義と自由』をどうぞ。