原田泰『日本国の原則 自由と民主主義を問い直す』を読んで

あらすじ

わが国が豊かで安全で高い文化を持つ国になれたのは、「自由と民主主義」を基礎とする社会システムを中世から徐々につくり上げてきたからだ――2008年の石橋湛山賞に輝く常識的保守派の日本論。明治時代から第二次大戦後にかけての社会大変革を達成した哲学や思想、知恵、工夫などを分かりやすく解説。

感想

この本で扱われる自由は主に二つ。政治の自由と経済の自由である。この二つは相互に影響しあっており、片方が失われるともう片方も失くなる。日本の歴史を江戸時代まで遡りながら、この二つの自由について詳しく解説している。

まず、政治の自由について。本書の中では多くの部分が大東亜戦争前後の解説に当てられている。政治的な自由が奪われることによって、民主主義国家であった日本が大東亜戦争に突き進んでいくというものである。

確かにそういった面もあったのだろう。しかし、ヴェノナ文書の解読によって明らかになった、戦争に突き進ませた共産主義についての言及がないので、これだけでは歴史を見誤る。あくまで自由を理解するためのものである。

次に経済の自由である。これは私にとっては目新しい主張であった。保守主義者の中にも、日本の長期停滞は緊縮財政が原因であり、新自由主義グローバリズムは危険であるという主張がある。

しかし、歴史を紐解くと、官僚が民間の経済に介入をして成功した例はほとんど無い。現在の日本に必要なのは金融と規制の緩和であって、グローバリズムは悪ではないのだ。

備忘録

日本は普通の人々が幸福に生活できる国だ。いくらでも問題点を指摘できるだろうが、それでも多くの国と比べてまだまだましだと思うことができる。日本が、そのような国になれたのは、自由な国だったからだ。支配者が、人々の生活や楽しみに干渉せず、私有財産を保護し、自由な経済活動を認めたからだ。官僚的統制がうまくいったことは全くなかった。

結び

自由とは何か。当たり前すぎて考えたこともなかったが、実は日本では経済の自由は小さく、数え切れないほどの規制が日々官僚によって作られている。一方で、官僚主導のクールジャパンなどが巨額の税金を無駄にしている。我々は再びこの国を経済大国にするために、自由を取り戻さなければいけない。