林千勝『日米戦争を策謀したのは誰だ!―ロックフェラー、ルーズベルト、近衛文麿そしてフーバーは──』を読んで

あらすじ

なぜ、「平和」は「戦争」に負けたのか?戦争を企んだ「好戦家・ルーズベルト」と「国際金融資本家・ロックフェラー」そして国際共産主義の策動―彼らと対峙した「非戦派・フーバー」、「ピエロ・近衛文麿」はなぜ敗れたのか。渾身のノンフィクション大作。

感想

一言で言えば、日本はルーズベルト、近衛文麿、国際共産主義者、国際金融資本家に内外からの圧力を受けて大東亜戦争に突き進んで行ったのだ。近衛文麿は自らの野望のため、国内の共産主義者を利用し利用されていたようだ。

ところで、この本ではルーズベルトも近衛も国際共産主義者も、みな国際金融資本に使われる存在であるとされている。

第二次世界大戦は、国際金融資本家の下でソビエトとコミンテルン(共産主義インターナショナル)が裏舞台を仕組んだ戦争であるという説が唱えられています。国際金融資本家はソビエトの建国を始めとして国際共産主義者の勢力拡大に努め、第二次世界大戦によって東西陣営が相対立する冷戦構造をつくりあげたとの説もあります。

その上で、国際金融資本家が「西陣営が相対立する冷戦構造をつくりあげた」目的は次のように説明されている。

この年にはさらに重大な出来事がありました。ロックフェラー家が所有する鉱山で激しい大労働争議が発生して軍隊まで出動、爆破事件などジョン・D・ロックフェラー二世自身も身に危険が迫る思いをしました。

結局、彼はこれを上手く和解に持ち込みましたが、民衆から敵視されることは自身や一族の存在を脅かしかねないと悟るのです。(中略)

この時彼が「民衆にはもっともっと際立った巨大な敵をあてがわなければならない。民衆の大切なものを奪い取る絶対的な敵を」との結論に至ったとしても不思議ではありません。九九%と一%との富の偏在をめぐる対立を、地球上の五〇%と五〇%とのイデオロギーや軍事の対立の陰に追いやるのです。

本書では、国際金融資本が国際共産主義者といたるところで関係性を築いていたことや日本政府にも彼らと繋がる人物が入り込んでいたことは理解できた。しかし、国際金融資本が影響力を行使して目的については根拠が弱い印象であった。

備忘録

近衛は優柔不断でもなく、平和主義でもなく、皇室の藩屏でもなく、共産主義者でもありませんでした。彼は諸勢力の「扇の要」に居ながら、敗戦革命をめざす共産主義者を利用して支那事変を拡大させ日米戦争を起こし、強大なアメリカ軍をもって天皇の軍隊を粉砕し、昭和天皇の退位を謀ったのです。ゴールは親米政権としての自らの覇権獲得です。大東亜戦争は、藤原(近衛)文麿による“昭和の藤原の乱”であったのです。

結び

本の最後に次回作が出ることが予告されており、より深いところに切り込むそうなので大いに期待である。