フリードリヒ・ハイエク『隷属への道  ハイエク全集 I-別巻 【新装版】』を読んで

あらすじ

読まずに批判、中傷、誹謗されつづけたハイエクの主著。新自由主義の古典。第二次戦時下のイギリスでケインズ政策がナチズム、スターリニズム、社会主義と同様なべてファシズム(全体主義)にいたる道だと喝破し、大論争を巻きおこした問題作。自由を、市場を、擁護するその思想は、時代を超えて読み継がれ、サッチャー、レーガン、そして小泉構造改革にまで影響を与えていると言われています。

感想

内容は決して難しく無かった。以前、マルクスの『資本論』を読んだときに返り討ちに遭った記憶があったので、経済学者の古典を読むことに抵抗があったのだが、本書は非常に理解しやすいものであった。

内容の大半は左右を問わず集産主義がいかに恐ろしいものであるか、また、国家社会主義がドイツの専売特許ではなく、英国を始めとする自由主義社会も同じ道を進んでいたことが論じられている。

備忘録

自由主義者の主張は、諸個人の活動を調和的に働かせる手段として、競争というものが持つ諸力を最大限に活用すべきだということであって、既存のものをただそのまま放っておけばいい、ということではない。自由主義の主張は、どんな分野であれ、有効な競争が作り出されることが可能であるなら、それはどんなやり方にもまして、諸個人の活動をうまく発展させていくのだという、確信に基づいている。(中略)また、有効な競争が働くための条件を作ることが不可能な分野では、経済活動を導くために、競争以外のなんらかの方法に依存しなければならないということも、全く否定していない。だが、経済的自由主義は、諸個人の活動を調和させる手段として、競争に代えてより劣った方法が採られることには、断固として反対する。

これこそが自由主義の核心ではないかと思う。現在の日本では日々規制が増加しており、それらは概して競争を阻害するものである。規制を緩和し競争を促進することこそが、経済成長のために求められていることである。

ではなぜ競争が望ましいのか。それは決して経済学で言われる効率性の問題だけではない。より重要な理由があるのだ。

競争こそ、政治権力の恣意的な介入や強制なしに諸個人の活動の相互調整が可能になる唯一の方法だからである。まったくのところ、競争擁護論の主要点は、競争こそ、意図的な社会統制を必要としない、ということであり、また競争こそが諸個人に職業選択の機会を与えるということ、つまり、特定の職業の将来性が、それを選ぶことによって起こる不利益や危険を補ってあまりあるかどうか決断できる機会を与える、ということである。

結び

印象的だったのは、第二次世界大戦前のドイツや当時の英国と現在の日本に通じるところが多かったことである。特に新型コロナウイルスが流行して以降、さらに近づいている。日本人全員に読んでいただきたい一冊である。