あらすじ
1980年代、日本は世界で最も勢いのある経済大国だった。しかし、90年代に入ってバブルが崩壊、経済は停滞して「失われた10年」と呼ばれた。その後も不況から脱出できず、もはや「失われた30年」になろうとしている。その原因は何か――。すべては「税金と規制」の問題に集約される。だが、日本は世界に先駆けて少子高齢化が進み、財政状況も悪化。社会保障費は増え、自然災害も毎年のように日本列島を襲う。であれば「増税はやむなし」なのか? 上がる一方の税金と規制に苦しむ日本が打つべき手とは? 俊英の政治アナリストが、私たちに刷り込まれた「洗脳」を解く。
感想
本書は実践の書である。つまり、国会議員に規制や増税といった利権ではなく、減税や規制緩和といった国益のために働かせること、またそのために我々が出来ることについて語られている。
減税と規制緩和がなぜ大切なのかについては、先日紹介したハイエク『隷属への道』を読んで頂きたい。
備忘録
これ(「二対一ルール」)はトランプ大統領が就任直後に出した大統領令で、一言で言うと、「新しい規制を一つ作りたかったら、いらない規制を二つ廃止しろ」というルールです。つまり、トランプ大統領は、規制廃止をアメリカ省庁の役人にやらせたのです。
「規制を廃止しろ」と言うと、役人は、ひとつひとつの規制が、なぜ必要なのかを、とうとうと語り始めます。(中略)そのため、放っておけば、役人は今ある規制を守りながら、新しい規制を作り出します。しかし、二対一ルールががあれば、自分の実績を作るために、過去のいらない規制廃止に取り組みます。
規制とは必要性があって作られる場合もあるが、ほとんどが特殊利益団体のために作られる。トランプ大統領は規制が減らない現実の中で、上手く減らしていく方法を実現に移したのだ。
結び
政治家は、有権者との約束を期日通りに履行する。そこをデフォルトにしないといけません。政治家の「やりませんでした」「間に合いませんでした」は論外です。そして、履行したかどうかを必ずチェックし、裏切った人は容赦なく鉄槌を下す。(中略)国会で質疑し、国会で投票する、その結果だけが評価の対象です。
この一文をみると、著者が国会議員に随分と厳しい印象を受ける。実際、著者のTwitterを見ていると、主張が近い議員に対してさえも厳しい態度を取っている。しかしそれは、次の歴史から演繹される、草の根運動の基本だったのである。
パパブッシュは一九八八年の大統領選挙で、「増税はしない(中略)」と約束して当選したのです。(中略)ところがブッシュは大統領選に就任後の九〇年に、民主党議会と妥協して、増税したのです。(中略)次の一九九二年の大統領選挙では、減税派の共和党員はブッシュに票を入れませんでした。そのため、民主党のビル・クリントンが当選してしまったのです。
このことをきっかけに、減税派の圧力団体である、全米税制改革協議会を中心とする減税運動が信頼を獲得したのだ。つまり、口先だけの国会議員は落選させないと、いつまで経っても国民の話に耳を傾けないというわけである。