あらすじ
米国から世界に拡散する、「格差」と「分断の構図」とは何か? 成熟した民主主義国家で進む、分断のメカニズムを理解することで、知識人やメディアの偏向と劣化の理由がわかる。 知らず知らずのうちに、ラベリングされ、思考を規定されてしまう罠から、自分本来の暮らしと人生を、自らの手に取り戻すために!
感想
一言で言って不安になった。今後は技術革新がアイデンティティをさらに多様化し、分断も深くなっていくのだと言う。皇室を中心に一つに纏まってきた日本は、今後どのようになっていくのだろうか。
備忘録
民主主義社会におけるアイデンティティの分断は、選挙マーケティング技術の発展によってもたらされている。
これが、本書を読むことで私が初めて得た知見である。メディアで度々トランプの発言が社会を分断させていると言われるが、そんな単純では無いのだ。その上で、民主党と共和党がそれぞれ別の手法で分断を煽っていると言う。
知識人(民主党支持者)がアイデンティティの分断を作り出す際、最も利用する切り口は「属性ラベリング」である。例えば、所得、人種、学歴、性別など、客観的に利用可能なデータを基に人間を区分する方法だ。(中略)
属性ラベリングによって、人間社会を複数グループに分断した上で、それらの違いを再否定することにより、自らの発見を解消するアクションを正当化する主張をして見せるのだ。
言うまでもなく、一般的に言われる分断を生み出しているのはむしろリベラルの側なのである。一方で、共和党が使う分断の手法は次の通りである。
共和党を支持する保守派にとって重要なのは、「米国人であること≒米国の建国理念を受け入れること」である。したがって、保守派が主張する分断の根拠は、「建国理念」に対する賛否にある。
米国はイギリスによる課税に反対して独立・建国された経緯があり、彼らは政府が人々の経済生活や精神生活に介入することを徹底して拒否する。(中略)保守派が不法移民に対して極めて厳しい態度を取ることも、同様の思考から導き出される当然の帰結だ。米国の建国理念を受け入れることなく、憲法に忠誠を誓わない不法移民を、保守派の人々が受け入れることは絶対にないだろう。
これは日本でも非常に近いのではないだろうか。建国の礎である皇統の男系継承を守りたい人が保守派に該当する。しかし、アイデンティティが多様化し分断が加速する中で、筆者は次のような未来を予想する。
「日本」というものを残すためにはどうするのか。残すべきなのかという前提から問い直してみなければならない岐路に、われわれは立たされているのである。
結び
たとえ愛国者であっても、伝統を日本人のアイデンティティとして押し付けるようでは、皇統を中心にした日本の伝統は壊れてしまうことになるだろう。日本を守るために何をすべきかについて考えなくてはいけない。